総力特集「本当に面白いフランス映画」 総力特集「本当に面白いフランス映画」

映画の歴史は、
フランスから始まった。

1895年にフランスでリュミエール兄弟が発明したシネマトグラフ、それが映画の始まりでした。
以来、トリック撮影やアニメーション、犯罪映画など、
世界に先駆けて新しい表現を開拓し続けているのがフランス映画です。

そして、フランスが生み出した多数の名作の中から、
映画評論でも知られるフランス文学者、中条省平氏が20作品を選出。
その厳選20作を、全作品、中条氏による解説文章付きで放送します。

専門家による選定と解説で、“本当に面白いフランス映画”を、どうぞお楽しみください。

全作品、中条省平の解説付き!

中条 省平(ちゅうじょう しょうへい)
中条 省平(ちゅうじょう しょうへい)

学習院大学文学部フランス文学科教授。パリ大学文学博士。
著書に『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)、『映画作家論―リヴェットからホークスまで』(平凡社)、『クリント・イーストウッド―アメリカ映画史を再生する男』(朝日新聞社)など多数。

HDテレビ初放送5作品!毎月1本、HDテレビ初放送作品が登場する貴重なラインナップ。

9月放送作品

中条省平による解説全文は
こちらをご覧ください

9/5 23:00
『5時から7時までのクレオ』

“ヌーヴェルヴァーグの祖母”とも呼ばれるアニエス・ヴァルダ監督が、ガン検診の結果を待つ女性歌手の姿を描いた意欲作。ジャン=リュック・ゴダールの特別出演も見所。

1962年 フランス

監督:アニエス・ヴァルダ

出演:コリンヌ・マルシャン/アントワーヌ・ブルセイエ

中条省平のここに注目!
癌の恐怖を抱いてパリをさまよう美貌の女歌手。
その末期の目に映る風景。パリの街の夢幻的な美に酔わされる。

5時から7時までのクレオ

9/5 深夜0:45
『モンパルナスの灯』

パリ派を代表する画家、モジリアニの晩年を描いた伝記映画。企画者であるマックス・オフュルス監督が急逝し、引き継いで制作したジャック・ベッケル監督の代表作となった。

1958年 フランス

監督:ジャック・ベッケル

出演:ジェラール・フィリップ/リノ・ヴァンチュラ

中条省平のここに注目!
不遇の画家を演じるフランス映画の貴公子。
貧窮の極みを演じてさえ、ジェラール・フィリップの気品は永遠だ。

モンパルナスの灯

9/12 23:00
『美しき諍い女 [最高画質版]』

絵画“美しき諍い女”の制作をめぐる、老画家と若く美しいモデルの官能的で緊張感溢れるドラマ。カンヌ映画祭でグランプリに輝いた、ジャック・リヴェット監督の最高傑作。

1991年 フランス

監督:ジャック・リヴェット

出演:ミシェル・ピッコリ/エマニュエル・ベアール

中条省平のここに注目!
全裸のモデルと厳格な画家の仕事の現場は、まるで真剣勝負の一騎打ちだ。
芸術創造の神秘を描き切る1作。

美しき諍い女 [最高画質版]

9/12 深夜3:15
『ファンタスティック・プラネット』

ステファン・ウルのSF小説『オム族がいっぱい』を基にした長編アニメーション。『ガンダーラ』のルネ・ラルー監督が、奇妙な巨大生物に支配された惑星での出来事を描く。

1973年 フランス=チェコ

監督:ルネ・ラルー

中条省平のここに注目!
フランス製SFアニメを代表する作品。
斬新な絵柄と世界観が各国のアニメファンに大きな衝撃をあたえた。

ファンタスティック・プラネット

10月放送作品

中条省平による解説全文は
こちらをご覧ください

10/3 22:45
『ぼくの伯父さん』

フランスのユニークな喜劇映画作家J・タチが「ぼくの伯父さんの休暇」で好評を博した紳士ユロ氏に再び扮し、彼の日常や彼と甥の少年の心の交流を描写した名作コメディ。

1958年 フランス=イタリア

監督:ジャック・タチ

出演:ジャック・タチ/アラン・ベクール

中条省平のここに注目!
独創的な笑いの世界を作りあげたジャック・タチ。
その「タチ・タッチ」の真髄がこめられた心やさしい喜劇。

ぼくの伯父さん

10/3 深夜1:00
『悪魔の美しさ』

フランス映画界の名匠R・クレール監督が、「肉体の悪魔」のG・フィリップ、「アタラント号」のM・シモンを主役に迎え、ファウストの伝説を独自に映画化した運命悲喜劇。

1950年 フランス=イタリア

監督:ルネ・クレール

出演:ジェラール・フィリップ/ミシェル・シモン

中条省平のここに注目!
「ファウスト」伝説の映画化。
笑いのなかに人類の未来という痛烈なテーマを打ち出す。現代でこそ必見の名作。

悪魔の美しさ

10/10 23:00
『レオン/完全版』

ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン出演の『レオン』に、リュック・ベッソン監督が新たなシーンを加えた完全版。孤独な殺し屋と少女の姿にさらなる奥行きが生まれている。

1994年 フランス=アメリカ

監督:リュック・ベッソン

出演:ジャン・レノ/ナタリー・ポートマン

中条省平のここに注目!
激烈な暴力がはじける犯罪映画。二つの無垢な魂が通じあう愛の映画。
その融合に成功した世界的な大ヒット。

レオン/完全版

10/10 深夜1:30
『アーティスト』

第84回アカデミー賞で作品賞など5部門に輝いた秀作。サイレント映画のスターがたどる栄枯盛衰を大胆にもサイレント、モノクロ、スタンダードサイズのスタイルで描いた。

2011年 フランス

監督:ミシェル・アザナヴィシウス

出演:ジャン・デュジャルダン/ベレニス・ベジョ

中条省平のここに注目!
モノクロ、サイレントで、映画の黄金時代の興奮を再現する極上のエンタテインメント。
よくぞやってくれました!

アーティスト

イラストコラム
おしゃれは、フランス映画が
教えてくれた

おしゃれの代名詞とも言えるフランス映画。あの頃の私たちは、そこからおしゃれを学びました。
ここでは、フランス映画が教えてくれたおしゃれについて、ご紹介します。

9月放送『5時から7時までのクレオ』より
クレオが教えてくれた、黒いワンピース

シンガーのクレオは、2時間後に医者の診察を受ける。自身の癌を予感し、死の恐怖を感じた彼女は、黒いワンピースを身にまとってパリの街を彷徨う。そんな時出会った兵士アントワーヌ。不安な気持ちを共有できる相手を見つけ、クレオはアントワーヌと共に医者に会いに行く。

リトル・ブラック・ドレス(LBD)

街を彷徨うクレオが着る黒のワンピースは、リトル・ブラック・ドレス(LBD)と呼ばれ、現代でも定番のスタイルとして愛されているアイテムの一つである。1926年にココ・シャネルが発表した、コルセットを使用しないストンとした黒いワンピースは女性の身体を解放する。それに加え、黒のドレスはビジューやネックレース、ベルトなどの小物を使って個性を出せる自由さが受け入れられ、ファッショニスタの定番となった。

未来への不安を表す“黒”

クレオは、それまでのファンシーなファーやドットのポップな服装から一変し、シックな黒のワンピースに同系色のストール、インパクトのある大ぶりなモチーフのネックレースを合わせ、気品と知性を感じさせるフォーマルな装いを見せる。それは、映画の雰囲気を一気に変える鮮烈な印象を与える。彼女は死への不安から、夢を見るよりも、現実へ立ち向かう勇気をかき集めなくてはならなくなる。ある種の自己探求に入る為に、輪郭のハッキリしたエレガントな黒のワンピースで正装したかのようだ。待ち受ける未来への漠然とした不安を表現するのに「黒」という色がふさわしいと、監督のアニエス・ヴァルダも考えたのだろう。

癌の不安に立ち向かう過程で、真実の恋人にも出会う事になるクレオ。タイトル通り本作は“5時から7時まで”の2時間弱がリアルタイムに近い形で進行する中で、クレオの大人の女性への移行も凝縮して描かれており見事だ。そしてクレオが彷徨う1961年の強い日差しのパリの、瑞々しい眩しさが美しい。

リトル・ブラック・ドレスを推奨したのはシャネルだけではない。映画『ティファニーで朝食を』でのオードリーのブラックドレスを手がけたユベール・ド・ジヴァンシィの存在も忘れてはいけない。映画史に残る印象的なシーンには欠かせないLBD。時代を超えるファッションアイテムとして、永遠に愛されていくことだろう。
*イマジカBSにて、放送版もお楽しみいただけます。

8月放送『アメリ』より
アメリが教えてくれた、赤いニット

神経質な母親と、冷淡な父親に育てられたアメリは、コミュニケーションの苦手な女性に育つ。カフェで働くある日、彼女は人を幸せにする喜びに目覚める。そんな時、自分と同じ孤独で個性的なニノを好きになる。自分に気づいてもらおうとするアメリだが…。

ファンタジックなアメリの世界

フランス色が濃い、華奢で華のあるオドレイ・トトゥが演じるアメリの美しさに、誰もが魅せられた。暖色系を基調にしたファンタジックな映像世界。短い前髪から覗く子供のような瞳で、フィット感のある赤いニットを着て緑の背景に佇むアメリは、劇中の彼女自身の戸惑いを超えており、パリの街に咲く花のように官能的ですらある。本作の衣装を担当したのは、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』でアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされるなど、今後の活躍が期待されるコスチュームデザイナー、マデリーン・フォンテーヌ。彼女の衣装デザインによって、レトロで網目の種類の違うニットや、ロマンチックなドットのカットソーでニノといる歓びを控えめに表現したり、ドットの赤い傘や雨や水切りの水紋で水玉をリンクさせたりしている。クレーム・ブリュレを割ってユーモアとカタルシスをミックスしたり、潤いも軽妙さも忘れないバランスは、おしゃれなフランス映画の極致となった。

アメリのテーマカラー“赤”

アメリは作中、赤いニットをはじめ、赤を差し色として使っている。モノトーンのベーシックな服に赤を差し色として使ったりと、「差し色」をポイントにするコーディネートをパリジェンヌたちは得意としているのだ。フランス人は赤ちゃんが生まれるとそれぞれの子供にその子にあった色を与えることを知っているだろうか?一人っ子の家庭が少ないフランスでは、それぞれの子に特徴を作ろうとテーマカラーを与える。ただ無作為に色を与えるのではなく、多くの人が瞳や髪の色に合った色を選ぶ。青い目をしている子には青を、オレンジや赤毛の子には緑、黒髪には赤を合わせるのがスタンダード。アメリの髪はブルネット(黒)のため、彼女は差し色として赤を使っているのだ。パリの街角で、美しいブルネットに赤のベレー帽を合わせたり、オールブラックのコーディネートに赤のリップを合わせるパリジェンヌが多いのもうなずける。

シンプルな組み合わせに差し色を。今日のティータイムは、赤いニットを着てクレーム・ブリュレはいかが?キャラメリゼを最初に割るのも忘れずに。
*イマジカBSにて、放送版もお楽しみいただけます。

7月放送『なまいきシャルロット』より
シャルロットが教えてくれた、ボーダーシャツ

思春期を迎える13歳の少女が主人公の本作では、カリスマ歌手セルジュ・ゲンズブールと女優ジェーン・バーキンの娘シャルロット・ゲンズブールが主演に抜擢された。

ボーダーシャツ流行の原点

1985年12月にフランスで封切られた本作は、一躍“シャルロット旋風”を巻き起こす。街では、さりげない彼女のスタイルを真似する少女がたくさん現れた。今では定番となったボーダーの長袖Tシャツも、この映画で彼女が着ていたのが流行の原点。肩がずれ落ちそうな2サイズ大きめのボーダーシャツの袖を折り曲げ、華奢な手首がチラッと見えるような七分丈にし、デニムスカート、ホワイトスニーカーを合わせる、現代のノームコアの原点にもなるスタイル。この時着ていたボーダーシャツは、フランスの老舗ブランド 「オーシバル」のものだ。

由諸あるブランド「オーシバル」

フランスのボーダーシャツを代表するブランドにはセイントジェームス、オーシバルの二つがある。青いミツバチのマークでおなじみのオーシバルは1939年にフランスのリヨンでチャールズ・バトンが創立したブランドで、ブランド名はフランス中部にある小さな村から名付けられた。50年代から60年代にかけてフランス海軍の制服に起用され、ピカソなどにも愛されたことで有名になったオーシバルのボーダーシャツは、ラッセル編みという普通のカットソーよりも複雑な構造で作られた生地で、毎日洗濯してもへこたれない、丈夫な生地でワークウェアとしてフランスで愛されている。

日本の少女を魅了したシャルロット

インパクトのあるアイテムというより、どこにでもありそうなスタンダードなアイテムをサイズやディテールで魅せる「チープシック」な着こなしで、シャルロットは、日本でも雑誌「オリーブ」を読む女の子たちにとってのアイドルになる。ファッションだけでなく、この映画で彼女が演じたキャラクターそのものが、今なお多くの少女の共感を呼んでいる。

原題の“L‘Effrontée”は「なまいきな女の子」という意味。もう子供じゃない。でも大人でもない。その境界線にきた少女の不安感をこれほど繊細に画面に現した女の子は、今までいなかった。どこにでもいそうでいながら、特別な雰囲気を醸し出すシャルロットの魅力。あの頃の私たちは、彼女の着たボーダーシャツを真似することで、少しでもその魅力に近づこうとしていた。
*イマジカBSにて、放送版もお楽しみいただけます。

イラストレーター:Aiko Fukuda

1986年千葉生まれ。ブリッジウォーター州立大学芸術学部グラフィックデザイン学科卒業。
帰国後グラフィックデザイナーなど働く傍ら、趣味で点描画を描き始める。
2014年よりイラストレーターとして活動を本格化させ、一本のペンで描かれる繊細かつ独特な世界観でファッション誌や広告、美術館背景などで起用される。
AIKO FUKUDA [http://www.aikofukuda.com/]