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【世界の巨匠〈ビリー・ワイルダー〉】「サンセット大通り」

やむにやまれぬ事情でハリウッド往年の大女優ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン)の屋敷へと逃げ込んだ売れない脚本家ジョー(ウィリアム・ホールデン)。二人と謎めいた召使いマックス(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)が織りなす狂気の物語。

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ジョーの役は当初、二枚目スターであるモンゴメリー・クリフトに決定していたのだが、クリフト自身が年上の女優の囲い者となることでブレイクのきっかけを作ったという過去を持っていたため、この役を演じることでそれが明るみに出ることを恐れ、結局降板した。

 

撮影所を訪れる場面でノーマは「この撮影所は、私が建てたようなものよ」と彼女のことを知らない若い守衛に言い放つ。実際に絶頂時のグロリア・スワンソンは六年連続でパラマウント社で最も利益を上げた女優だった。

 

完成披露試写を観たMGM社のボス、ルイス・B・メイヤーは、「さんざん世話になった映画業界を侮辱し貶めやがったな! 貴様はハリウッドから追放されるべきだ!」とワイルダーを罵った。それに対してワイルダーが返した一言は、ここに書くことが出来ないようなものだった。

 

だが、オーストリアからやってきたワイルダーがハリウッドを、ハリウッドの映画を心底愛していたからこそ、彼の描写は鋭いものとなったのだ。

 

映画史上に残る鬼気迫るラストは、おぞましいものだが、そこには全盛期のハリウッドを追慕する想いが充ち満ちているからこそ、さらに恐ろしく、そして哀しいのだ。

 

この場面の撮影が終わった瞬間スワンソンは、わっと泣き出し、その場にいた全員が拍手喝采した。他の場面の撮影がまだまだ残っていたにも関わらず、ワイルダーはスワンソンのために打ち上げのパーティを開いた。

 

そう、このラストのノーマ・デズモンドは、そしてグロリア・スワンソンは、狂気でも妄想でもなく、真実のスターとして輝いているのである。