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【世界の巨匠〈ビリー・ワイルダー〉】「昼下りの情事」

他人の情事の秘密を探って生計を立てている私立探偵の娘が、父の調査対象であるプレイボーイに憧れて、遊び人を装って猛接近。

 

いくらでも下品に、生々しくなりそうな設定だが、舞台となるのがパリ、監督がワイルダー、プレイボーイを演じるのがゲイリー・クーパー、そして娘を演じているのがオードリー・ヘプバーンとなれば、生々しい、下品どころか、洒落たお伽噺のようになってしまうのだから、これもまた映画のマジックである。

 

 

これほど素敵な作品が初公開当時には不評だったとは信じられない。クーパーが若い娘と恋をするプレイボーイを演じるには歳を取りすぎている、と当時の批評家や観客が感じてしまったのが封切り時の不評の原因らしいが、クーパー自身は、この作品での自分の演技が気に入っていた。しかし、老境に入りかかっていた(撮影当時五六歳)クーパーだからこそ、プレイボーイの最後の、そして本物の恋を説得力を持って演じられたのだということを観客は理解するようになり、「昼下りの情事」は今ではワイルダーの代表作の一本であると考えられている。だって、この役の候補になっていたユル・ブリンナーが演じていたらと思うと、ぞっとするでしょう?

 

そして、なんといってもオードリーの魅力。ワイルダーと組んだもう一作「麗しのサブリナ」(54)は、ヒロインが年上の恋人ハンフリー・ボガートと共にニューヨークからパリへと船で去るところで終わり、「昼下りの情事」は年上の恋人と共に列車でパリから去り、「今ではニューヨークで暮らしています」という父親のナレーションと共に終わるというのも考えてみれば面白い。

 

このナレーションは最初、用意されておらず、二人がちゃんと結婚したということにしないと、キリスト教団体からの圧力がかかるとわかったため、あわてて追加したものだったとのこと。