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【世界の巨匠〈ビリー・ワイルダー〉】「お熱いのがお好き」

アメリカ映画協会選出「史上最も面白いアメリカン・コメディ」の称号は伊達じゃない!

 

 

ジャック・レモン+トニー・カーティス+女装+ギャング+マリリン・モンローとくれば、面白くならないわけがないのだが、それにしても「お熱いのがお好き」の笑いの豊穣さは時を経ても、まったく衰えていないのである。

 

レモンが演じるジェリーが、自分のことを女性/ダフネだと思い込んだ大富豪からプロポーズされたと嬉しげに(!)、カーティス演じる相棒に報告する場面は最初失敗だった。レモンのボケのセリフに試写の観客が笑いすぎてしまい、カーティスの突っ込みのセリフが聞こえなかったのだ。一計を案じたワイルダーは、セリフの合間合間にレモンにマラカスを振らせて撮りなおすことにした。マラカスが鳴っている間に観客は存分に笑い、カーティスのセリフにも笑い、マラカスそのものの可笑しさもあって、笑いは数倍に増えたのだ。

 

その大富豪ジョー・E・ブラウンとレモンが見事なタンゴを踊る爆笑場面(一輪のバラの使い方!)で、ダンスの振り付けをしたのはギャングのボス役で出演しているジョージ・ラフト。ホンモノの「その筋の人たち」とお付き合いで知られるラフトは、映画界に入る前はプロのジゴロでダンスの名手でもあったのだ。

 

妊娠中でもあったモンローは、毎日撮影現場になかなか現れず、セリフ憶えも極めて悪かった。ワイルダーもカーティスも激怒し、後々までモンローを許さなかったが、レモンは現場で彼女と仲良くやっていた。「あの娘は自分の限界を理解していて、どうすれば自分が一番輝くのか知っていたんだ」とレモン。「何でも器用にこなせる女優ではなかったけれど、彼女ほど自分の魅力をスクリーンに刻みつけることのできた女優を私は他に知らない」

 

「お熱いのがお好き」はアメリカ喜劇の、ワイルダーの、レモンの、そしてマリリン・モンローの最高傑作なのだ。