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【世界の巨匠〈サム・ペキンパー〉】「戦争のはらわた」

舞台は第二次世界大戦におけるロシア戦線。ドイツ軍の歴戦の勇士シュタイナー軍曹と、鉄十字勲章を手に入れることしか考えてない傲慢なシュトランスキー大尉の対立を軸に、戦争の愚かさを描出していく戦場映画の傑作。

 

サム・ペキンパー監督は前作『キラー・エリート』(76)が完成する前から本作の演出のオファーがなされていたが、かつて1945年夏の中国戦線に赴任していた彼は、まもなくの終戦で直接戦場に赴くことはなかったが、それでも幾たびか生命の危機に見舞われ、人の死を間近に目撃した(彼曰く「人生で最も長い数秒間」)ことなどにより、第2次世界大戦の映画に着手することにどこかためらいがあった。

 

しかし、そのころ彼のオフィスに『キングコング』と『スーパーマン』のスクリプトが届けられたことで、彼は華やかな特撮大作よりも第二次世界大戦の現実を見据えた本作を選択する道を選んだのである。

その結果、本作はペキンパーとしては初の本格的戦争映画にはなったが、これまでの彼の西部劇群もすべて“戦闘”の映画として描かれていたことを思えば、何の違和感もない。

 

ペキンパー映画に必須ともいえる「最も長い数秒間」を具現化するためのスローモーションを多用した戦闘シーンの数々は、凄惨であると同時に人が血を流しながら息絶えていくことでの生の渇望までエモーショナルにもたらされていく。

 

一方で、かつて本作の日本語吹替短縮版を制作していたスタッフは、作業中にたった3コマのショットを発見して驚嘆したという。それほど短いシーンを綿密に積み重ねながら、どんなにエモーショナルであっても戦争は地獄であることを、ペキンパーはエンタテインメントの力を借りて巧みに訴え得ているのだ。

 

なお本作はエンドタイトル後に、それまでずっと戦争の狂気を皮肉るかのように高笑いしていたジェームズ・コバーンがふと嘆息交じりに漏らす“Oh! Shit”の一言がカットされた短縮版がビデオ&LD化され、長らくファンの物議を醸していたが、現在は復元されたものを見られるようになっている。