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【世界の巨匠〈サム・ペキンパー〉】「ワイルドバンチ [ディレクターズ・カット版]」

名匠サム・ペキンパー監督が流血と銃弾の嵐をもって滅びゆく西部へオマージュを捧げたウェスタン大作。もう若くはない無法者たちが、逃亡の果てに報酬よりも仲間への「義」を選び、映画史上に残る暴力と血とスローモーション撮影、そして映画編集の極致“デス・バレエ(死の舞踏)”へなだれ込んでいく。

本作が製作された1960年代後半、ヴェトナム戦争の激化とともにアメリカに対する夢や希望が失われていき、同時にその象徴ともいえる西部劇への興味も削がれ、代わってイタリア製西部劇マカロニウエスタンや体制への反抗としてのアメリカン・ニューシネマなどが台頭し始めていた。

 

そのさなか、ペキンパーは自らの手で愛してやまない西部劇にとどめをさすかのような険しい道を選んだことで、従来の西部劇ファンはもとより映画人の間でも激しい賛否をもたらすことになった。

 

しかし、たとえば本作に否定的だった西部劇の王者ジョン・ウェインが、その後ペキンパーとの仕事を望み続けていたという事実も興味深いところではある。

 

ウイリアム・ホールデンやロバート・ライアン、アーネスト・ボーグナインらキャスト陣が魅せる、枯れても粋な漢(おとこ)としての佇まいを醸し出すため、撮影現場でペキンパーの怒号が轟かないシーンは一度もなかった。中盤の見せ場となる橋の爆破は、スタントマンに「きさまのためには二度と仕事しない!」と言わしめるほど危険な状況下での撮影であった。

 

一方、そんな暴君の彼に椅子を投げつけるなど、とことん喧嘩しながら硬質かつ美しい音楽を構築したジェリー・フィールデイングも、以後ペキンパー映画に欠かせない存在となっていく。

 

本作はアメリカでの一般公開の際、製作サイドが回想シーンなどを勝手にカットしたおよそ136分の短縮版を作り、それが世界中に流布されて久しかったが、ペキンパーの死後10数年経って146分ディレクターズ・カットが作られ、日本でも1997年に公開された。