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【世界の巨匠〈オリヴァー・ストーン〉】「プラトーン」

サイゴン陥落の1975年をベトナム戦争終結とするなら、その数年後の「地獄の黙示録」(79)と「ディアハンター」(80)を、その戦争を直接描いた嚆矢とすることに異論はないだろう。

ただし前者は一種の幻想譚であり、後者はその虚構性(ロシアンルーレットはなかった云々)を指摘されるなど、現実の投射性は低い。ベトナム戦争そのものを伝える作品の誕生には、そこからさらに数年を要した。それがこの「プラトーン」(86)である。アカデミー賞では作品、監督賞を含む4部門受賞。興行的にも大成功を収めた。

 

公開当時の宣伝素材には、各マスコミの絶賛評と共に、ウディ・アレンの言葉が紹介されている。いわく「いい映画、素晴らしい映画だ」と。たいしたことは言ってない。しかしこの映画には、あまり戦争映画を語るイメージのないアレンからさえ、言葉を引き出す理由があった。それはオリバー・ストーンが実際に戦場に行った監督だということだ。川本三郎によるとその事実には誰も勝てない。

 

経済力ある家庭に育ったストーンは、イエール大学にまで進んだトップエリートだ。しかし学業への疑義、両親との反目、文学の夢の破綻などから大学を中退。自ら兵役を志願する。召集されたのでなく、自ら戦場に行ったのだ。「俺は人が死んでいくのを見た。俺は人を殺した。俺はもう少しで殺されそうになった」と述べ、受勲もある。それほどの戦場体験を持つメジャーの映画監督はいまだいない。

 

「プラトーン」は、人間的な理を残すエリアス(ウィレム・デフォー)と、倫理を失ったバーンズ(トム・ベレンジャー)、対照的な二人の先輩兵の間で揺れる新兵クリス(チャーリー・シーン)の心を描く。

 

「父や祖父のように一度は戦場に行ってみたい。もし行かないとこの世代で最大の出来事を見逃す」と語るストーン自身が見たものが、ここに焼き付いている。彼の父と祖父もそれぞれ第一次、第二次大戦に赴いている。人類の暴力は世代をまたぐ。以後のストーンを規定するテーマはここに始まる。

 

参考文献

川本三郎「ダスティン・ホフマンは『タンタン』を読んでいた」(キネマ旬報社)

ジェームズ・リオーダン「オリバー・ストーン―映画を爆弾に変えた男」(遠藤利国・訳 小学館)

「プラトーン」ブルーレイ収録 メイキング・ドキュメンタリー