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【世界の巨匠〈オリヴァー・ストーン〉】「ナチュラル・ボーン・キラーズ」

「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(94)は、オリヴァー・ストーンの監督としての力量が頂点に達した作品だ。

 

性的虐待を受け続けた少女と、寄る辺なき男。そんな二人のボーイミーツガールといえばよくある話。しかし父を惨殺し、母に灯油をかけて火をつけるとなると話は違う。そこから始まる、殺人に次ぐ殺人の逃避行。

 

原案のクエンティン・タランティーノは、本作に強い不満を示したという。具体的にどこに反発したかははっきりしない。「(オリジナルは)もっと50年代的だった」というストーンの言葉から、風俗的な変更が推測されるが、少しでも改変されたこと自体が気に入らなかったともいう。

 

しかしストーン演出のスケールと技術の冴え、狂気への突き抜けは尋常でなく、「レザボア・ドッグス」(92)で賞賛を集めていたとはいえ、この時点のタランティーノにこれほどの達成は難しかったと思う。しかしアニメ映像の混入など、後の「キル・ビルVol.1」(03)のアイディアは既にある。

 

そのアニメ映像を含む、斬新な映像の洪水は、殺人にとりつかれた二人の目で見た世界を追体験するかのようだ。鮮明な35ミリから粒子の荒い8ミリ映像、そして白黒まで画面の質も次々と変わる。

 

最大のクライマックスは、刑務所における終盤の暴動だ。これは実際の刑務所で、実際の囚人たちを使って撮影したという。人種差別も横行し、本物の暴動にもなり得る危険極まりない撮影に、現場の緊張は頂点に達し、その混乱は画面に痛いほど明らかだ。

 

そして当人はいい顔をしないが、ストーンは主演ウディ・ハレルソンの実の父が、本当に殺人罪で服役していることを好んで語る。ストーンは言う「代々続く20世紀の暴力。二人は人類史上最も凶暴な20世紀の果実なのだ」。暴力は代々続くとする「プラトーン」以来の思想がここに極まる。

 

トミー・リー・ジョーンズは本作を「芸術だ」と何度も主張する。時代を超えてこそ芸術だが、すでに21世紀を20年近く過ぎた今、あるいは時代はこの映画さえ甘ったるいものに変えてはいまいか。

 

参考文献

ジェームズ・リオーダン「オリバー・ストーン―映画を爆弾に変えた男」(遠藤利国・訳 小学館)

小出幸子責任編集「フィルムメーカーズ3 クエンティン・タランティーノ」(キネマ旬報社)

「ナチュラル・ボーン・キラーズ」ブルーレイ収録 オリバー・ストーンによる音声解説、

メイキングドキュメンタリー