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【世界の巨匠〈アッバス・キアロスタミ〉】「友だちのうちはどこ?」

アッバス・キアロスタミの本邦お目見え作品にして、キアロスタミ映画のおもしろさを隅々まで盛り込んだ文字どおり珠玉の作品だ。

 

主人公は小学校に通う少年。放課後、家に帰り学校の宿題をしようとすると、肝心のノートが違っている、隣に座る少年のノートまで持って帰ってしまったのだ! その子は今日も先生に厳しく怒られたばかり、このままでは明日には退学になってしまうかもしれない……。まわりの大人たちはみな、自分のことで精いっぱいで取り合ってくれない。四面楚歌の少年は、その子の家に行ってノートを返したいのだが、肝心の友だちの家が分からない。右往左往、あちこち訪ね歩く少年の道行きはジグザグ模様を描いて……。

 

初期のキアロスタミ映画の魅力は、なんといっても主人公となった少年たちの素の魅力だと言っても過言ではない。アハマッド少年を演じるババク・アハマッドプール少年はもちろんプロの子役ではなく、そのへんにいるふつうの子ども。キアロスタミは、この演技経験などないふつうの子どもに備わっているそのままの魅力をじわじわと引き出してゆくのだが、と同時にそこから、ドキュメンタリーともフィクションとも見分けがつかない不思議な映像空間へとぼくたちを招き入れてくれる。

 

そう、キアロスタミ映画の真髄は、なにより処女短編『パンと裏通り』(1970)ですでにみごとに開花しているとも言えるのだが、お遣いの帰り、怖い犬がいる通りをなんとかやり過ごそうとする少年の右往左往を、ドキュメンタリーを装いながら、その実、綿密な計算のもとに追いかけてゆく演出の妙にあるのだ。

 

この映画と、そして本作『友だちのうちはどこ?』でも見いだされるもの、それは子どもたちの飾らない日常をやさしく見つめるまなざしと、その日常を映画へと昇華せしめる細心にして大胆な演出にほかならない。そこでは、ドキュメンタリーがフィクションと戯れ合い、その間隙でそれまで知られることのなかった映画のワクワクするおもしろさが生まれる。キアロスタミ映画、まずは本作からオススメだ!