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Tバック、そして嘘のリアリティ……『ブルー・イグアナの夜』

ブルー・イグアナの夜大

まず、全国のTバックをこよなく愛する皆さんに朗報があります。「自分はおっぱいよりもお尻派だ」「Tバックは好きだが、拝むチャンスがなかなか無い」「いざ拝んでみたらレベルの低さにむしろ萎えた」そんな皆さんにはぜひこの映画を見てもらいたいと力説します。なぜなら、これほどハイレベルな映画なのにも関わらず、名だたる出演女優たちがほぼ常時Tバックを履いてお尻を見せている作品は他に類を見ないからです。ストリッパーが題材だから当たり前といえば当たり前ですが、本当に美しい様々な形のお尻、そしてそこに食い込むTバックは女性が見てもうっとりすること間違いなし。ちなみに、巨乳から微乳までおっぱいもふんだんに出てくるので、おっぱい派の人をがっかりさせることもありません!

 

この書き出しだとよほど下品な映画かと思われるかもしれませんがそれは違います。この『ブルー・イグアナの夜』という映画は、『イル・ポスティーノ』でアカデミー賞にもノミネートされた名匠マイケル・ラドフォード監督がストリッパー達の素顔を、リアリティを追求し即興(!)で撮り上げた美しくも切ない名作なのです。それはそれで、「ストリッパーのリアルライフなんて知りたくない!」「リアリティなんて何だか地味でつまらなそう」と思う人がいるのも当然です。ストリップはお金を払ってまでして得たい男性の夢であり、その裏にある女たちの努力やリアルな姿なんて誰も見たくありません。でも、ご安心ください。なぜならこの作品で語られるのは男性のために徹底的に作り上げられた、嘘のリアリティだからです。

 

主人公のNo.1ストリッパー・エンジェルを演じるのはダリル・ハンナ。公開当時ちょうど40歳ですが、さかのぼること15年ほど前に『スプラッシュ』でトム・ハンクスに拾われた不思議ちゃんのままの初々しさで、奇跡的な愛らしさを維持しています。映画で語られる彼女のリアルライフは、どうしても子供が欲しくて養子申請をする心優しい女性。赤いハート型のベッドに服を散らかして、女子高生のような露出度の高いギャルファッションでテイクアウトのピザを食べる。すべては男性が、ストリッパーの日常がこうだったら可愛いなと思わせる範疇を忠実に守っています。40代の彼女は、本当は鳥のエサのような食事と毎日の筋トレとエステ通いで必死に体型をキープしているハズですが、そんな男性が幻滅するような本当のリアリティは一切描かれていません。最後にセックスしたのが5、6ヶ月前、というのもファンタジーですよね! 3年前でもなく2日前でもない、枯れすぎてもなくやりすぎてもいない、絶妙なご無沙汰感に男心がグッと掴まれるのではないでしょうか?

 

さらにインパクト大なのが『グレイズ・アナトミー』でお馴染みのアジア系女優サンドラ・オー演じるジャスミン。豊満な体系の白人ストリッパーたちをものともせず、貧弱、いやスレンダーなアジア人体型全開で脱ぎまくる姿に、同じ人種の女性として敬意を表します。肌の奇麗さとお尻の形はストリッパーの中でもピカイチで、それもアジア系ならでは。そんな彼女のリアルライフはなんと、詩人志望の文学少女というから驚きです!不思議系のエンジェルとは対照的な知的系ですね。そんな詩人ストリッパーである彼女は通っていた詩の会で出会った真面目な男性と恋に落ちるものの、彼はストリップという仕事を理解できず離れていってしまう。このストレートでチープなリアリティにより、なかなか美人とは言い難いサンドラ・オーがいつしか美しく見えていくから不思議なのです。フランス人のストーミー、ハードロック系のジョー、新人の可愛い子ちゃんジェシー(巨乳で童顔、日本人男性にはオススメ!)などその他のストリッパーたちも同様に、恋愛、妊娠、ブラコンと、それぞれ男性が引かない程度の切ない悩みを抱きながら必死に生きていて、誰もが思わず守ってあげたくなってしまうでしょう。

 

この作りこまれた嘘のリアリティこそはまさに名匠ラドフォード監督のマジック。男性が許せる範囲でストリッパーたちのリアルライフを見せる事により、逆に女性を美しく官能的に演出したある種の女性賛歌映画と言えます。女たちだってTバックを美しく履きこなすためのムダ毛の処理とか、人には言えない山のような影の努力や醜態は知られずに、美しいものとしてあがめられたいですから。実際、監督は女性を理解もしていないし、理解する気も無いようにも思います。この映画を見ていると「女という生き物はまったく理解不能で、不思議で、そして永遠に愛おしい。」そんな男性たちの呟きが聞こえてくる気がします。それはきっと正しい感想で、男女はお互い分かり合えないから興味を持ち、理解しあいたいと努力し、愛しあうものなのかもしれません。とりあえずはこの映画を見て、嘘だからこそ美しいストリッパー達の姿に切なくも優しい気持ちを感じましょう。人肌恋しい寒い夜に、ココロとカラダに小さな温もりを運んできてくれる、そんな一本です。

 


ブルー・イグアナの夜
DANCING AT THE BLUE IGUANA

2000年 アメリカ
監督:マイケル・ラドフォード
出演:シーラ・ケリー ダリル・ハンナ ジェニファー・ティリー サンドラ・オー

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